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ライターの瀬戸マサキです。
みなさん、大丈夫ですか? これを聞いている頃には、もう参院選の結果が出ているかもしれません。排外主義が堂々とアピールポイントとして叫ばれ、実際それが魅力として人々に響いてしまう、という状況を、私たちはこの数週間目の当たりにしてきました。
中には、なぜあんな政党が人気を得られるのか分からない、とか、巧妙な印象操作や心理テクニックによって人々が騙されているんだ、とか、あるいは何も知らない若者が流されているんだ、とか、色々な素人の分析で私たちはこの状況を納得しようとしてしまいますが、実際に調査をした荻上チキさんのチキラボの報告によれば、参政党の支持者は40代〜50代の割合が高く、若者の支持もありますが、国民民主党、日本維新の会に次いで三位とのことです。また、支持者の大半は「騙されている」というより参政党の考え方にちゃんと共感した上で支持している、とのことです。
つまりこれは、私たちの社会に、参政党のような考え方を本気で正しいと思っている人たちがしっかりいるということです。
以前Xで誰かが言っていました。
「結果的に自分の首を絞めることになったとしても、差別できるならそれでいい、という層が一定数いるんだ」という内容でした。
一定数、と考えると、今後もずっとい続けるんだな、という絶望が肩にのしかかってきますが、逆に言うと、これまでもずっといた、ということでもあります。そういえば、私たちはずっと、排外主義的な国に住んでいたではありませんか。
今日からここは日本だ、お前らは日本国民だと言ったくせに、二級市民として扱って、戦争に負けたら今度は突然日本国籍を剥奪しましたよね。
「あいつらが井戸に毒を入れてるぞ」と嘘を広めて、ボコボコにしたり、殺しましたよね。それに対して政府も警察も加担しましたし、裁判所もそれをほぼ容認しましたよね。
お前らには年金制度は使えないよ、と排除しておいて、そのせいで老後の生活が苦しくなった人たちに、今度は「お前らの生活保護受給率は異常に高い」と騒ぎましたよね。
日本で生まれた子どもと引き裂かれそうになっている家族の自宅前におしかけて、出て行けと大騒ぎしましたよね。
「良い朝鮮人も悪い朝鮮人も〇せ」とプラカードを掲げて街を練り歩きましたよね。
滞在許可を持たないというただそれだけの理由で収容し、医療へのアクセスを制限して、何人も何人も見殺しにしていましたよね。
見た目を根拠に在留カードの提示を求める警察官を擁護するようなコメントをたくさんしていますよね。
都知事として初めて「お前らの民族が虐殺されたことについての追悼文は出さない」と決定した小池百合子を、ずっと再選させ続けていますよね。
具体的にどう共生していくかには全く関心を持っていないくせに、あいつらはマナーが悪い、非常識だ、と笑いや悪口のネタにしていますよね。
自分たちだけでは学問や研究のレベルも維持できないくせに、あいつらみたいな研究者には金をやるなと騒いでいますよね。
自分たちだけでは労働力も税収も足りないくせに、あいつらには出ていってほしいと実際に声に出していますよね。
私たちの住むこの国は、政府も、市民も、ずっと排外主義的でした。
参政党が今やっていることは、排外主義や日本人賛美から、ジェンダー差別やLGBTQ+の否定に至るまで、ずっと自民党がやってきたことです。参政党はデマを流すことで有名になりつつありますけれど、自民党の安倍派、具体的には安倍晋三と、今も自民党の中心に近いところにいる山谷えり子も、「こんなとんでもないジェンダーフリー教育が行われている」と言って、実態とは異なるデマを流したことがあります。また、今後ポスト石破として有力とされている高市早苗も、かなり安倍派や参政党に近い考えの持ち主です。ずっっっと、そうだったんです。
今、初めて絶望している人は、これまで絶望せずに済んでいただけのことです。
私たちの社会は、突然悪くなったのではありません。アメリカはトランプの登場で突然悪くなったのではないし、日本も参政党が出てきて突然悪くなったのではないのです。もうすでに悪かったんです。自民党が一応建前上バランスをとっているように見せかけていたのが、今回の参政党は「バランスなんてどうでもいい」という姿勢でやっている、というだけの違いです。
もちろんそれは政治の文化の文脈では大きな違いですが、結果的に排外主義の被害を受ける人からしたら、何も違くありません。さすがにこれはやばいだろう、と危機感を感じている民族マイノリティの人もたくさんいますし、私自身も今回の参院選では本当に悲しくなるような言葉にたくさん触れました。でもこれを、絶対に、何か特殊なできごとのように捉えてはいけないと思います。そうしてしまうと、あたかも「これまでの排外主義は許容範囲だったけど、これはさすがにダメだよ」と思っていることになってしまいますよね。
でも実際は、これは、日本の、通常営業です。
もし今回この状況に危機感を感じて共産党や社民党に投票すべきだとあなたが思っているのなら、あなたはこれまでもずっっっっと、共産党や社民党に投票すべきだったんです。
逆に言うと、今後もし参政党が勢いを失って、あそこまでのファシズムを前面に出すような政党がいなくなったとしても、あなたはそれからもずっっっと、共産党や社民党に投票すべきなんです。
これは別に、誰かを責めているわけではありません。今回が最初でもいい。どうか、今回の参院選を特殊なものと思わないでください。今後も、考え続け、行動し続けてください。燃え尽きそうになったら、休んでください。そしてまた、力が湧いてきたら一緒に行動しましょう。
最初に大丈夫ですか? と聞きました。
大丈夫じゃないですよね。でも、少しでも今より大丈夫な未来を楽しめるように、生き延びましょう。
みんな、明日も生きようね。
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