ノーモア

「わたし」と「あなた」という、それこそ動物の一種としての人間の身体同士が、意思と意思が、そして命と命が、互いに互いをそれと認め合わなかったら、人間はいつか自動操縦モードを搭載してしまうだろう。あるいはもう搭載しているのかもしれない。
 そこから逃げ出すキーワードは、NO MORE ARIGATO だと思う。
瀬戸マサキ 2024.07.04
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「誠意がある」「敬意がある」ということの大切さについて最近はよく考えていて、というのもどうにもどうやら日本には、自分が持ってないマイノリティ属性を持ってる相手を前に物怖じしてしまうというか、「まちがったことを言ってはいけない」「傷つけてはいけない」という強い自己強迫に陥る人というのがたくさんいるらしいということを、まがりなりにも差別問題について講演なんかをやっていると痛感させられているからなんだけれど、いや、もちろんほかの国にもそういう人はいるに決まっていて、アメリカでも一定の期間を上品な、というか上品自認の白人に囲まれて過ごしているとそんな空気が蔓延してるのを感じはする。

 でもまあ、全体の傾向として、というもやっとした言いかたになるけれど、そもそもが「一歩でも踏み外したらならず者」みたいなハードモードをプレイさせられている日本の人たちにとって、まちがうことへの恐怖が一層強いのは自然なことなのだろうと思う。一六歳まで日本にいてアラサーになって戻ってきた私にも、そういう部分がないわけじゃないし。

グーグルストリートビューより。工事中の駅の様子。

グーグルストリートビューより。工事中の駅の様子。

 なんでこんなことを書いているかというと、時々思い出したように昔住んでいた街々をストリートビューで巡るという郷愁バーチャル旅行をするのが好きで、さっきもかつて週一くらいで利用してたシカゴの六三番&南カッテージグローヴの交差点にある駅をストリートビューしに行ったんだけど、そしたらしょっちゅう買い物していた駅すぐ横のスーパーマーケットが完全に更地にされたのち鉄骨が組まれている様子が目に入ったからです。

 建設中の看板には「Woodlawn Station」と書かれていて、アパートの下にテナントが入るスタイルの、ほのかにジェントリフィケーションの香り漂う建物ができる予定らしい。ストリートビューの日付が昨年九月だったから、今頃もう完成しているだろう。

 シカゴの六三番と聞いてピンと来る人には当然わかりきったことだけれど、この一帯は右を見ても左を見ても下を見てもアフリカ系アメリカ人しか目に入らないような場所で、三ブロック北のシカゴ大学では新入生に「絶対に行くな」と指導しているいわゆる「危険ゾーン」でもある。私のアパートは六一番と六二番のあいだにあって、生活に必要なものなんかをこのエリア以外で買おうとすると、バスをへたしたら乗り換えないといけなかったので、怠惰な私は毎日のように六三番のスーパーやガソリンスタンドのコンビニに行っていた。

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