館林ライオンズクラブ講話「私たちの多様な性とライフスタイル」
2020年2月20日、館林ライオンズクラブ2月第二例会に招待され、約20分間の講話をしてきました。ライオンズクラブは「我々は奉仕する We serve.」をモットーとする国際的社会奉仕団体です。一方で、中高年男性、しかも成功している経営者たちが集まっている団体——つまり社会の性差別や民族差別や障害者差別などによる既得権益を維持することに個人的にはメリットが大きいような人たちが大半を占める団体——ですので、社会問題については比較的保守的な立場を取る人が多いのだろうと予想されます。そんな場に私が呼ばれ、しかも「LGBTのこと」というトピックで話すという異例の機会に、喜びながらも不安がたくさんありました。
いわゆる「LGBT入門」は私じゃなくてもできる人がたくさんいます。セミナーなどを企業向け行政向けに販売している団体もあります。なので、せっかく私は話すのだからと思い、しっかりとクィア理論的な濃い内容をお話してきました。もちろん、専門用語は一切使わずに。話した内容を専門用語でまとめれば、クローゼット、抑圧、家族制度、ロマンチック・ラブ・イデオロギー、同性婚、性的指向概念の歴史、女性の性的主体性、性別変更要件、異性愛中心的な社会制度、マイクロアグレッション、経営者の女性割合、セクハラ、SOGIハラなどになります。
専門用語を使わなかったからといって、参加者全員にしっかり伝わったかと言えば自信がありません。しかし皆さんじっと話を聞いてくださり、中には特にすごくよく耳を傾けてくれていた人もいたり、頭を抱えつつも質問をたくさんしてくれた人もいて、こういった場で話すこと——ジェンダー・セクシュアリティにもともと関心があるわけではない、中高年の男性ジェンダーの人たち(つまりそれぞれの地域や企業などで大きな影響力を持つ人)が中心の聴衆を前に話すこと——の意義を改めて認識する機会となりました。ライオンズクラブの Facebook 投稿にもスピーチ内容がある程度きちんと反映されていて、安心しました。
また、私を呼んでくださった関係者の皆さんは、事前の打ち合わせでも「これからLGBTの人が自分たちの会社に入ってくることもあるし」「いや、もう既にいるのかもしれないよ」と話していて、この「既にいるのかもしれない」ということに気づいている経営者って日本全国で一体どのくらいいるだろうと思って聞いていました。もちろん、さらに言えば、ライオンズクラブの会員の中にも既にいくらでもいるでしょう。
見ようと思えば見える多様性が普段見えないのは、見せないようにしないと差別される社会、見なかったことにしてやりすごすのが正解とされてきた社会の結果です。目の前の人を異性愛者でシスジェンダー(トランスジェンダーではないという意味)であると決めつけない、どんな人に対しても敬意を持つ、というただそれだけで、景色が変わります。例会に参加した人たち全員に、その部分だけでも持ち帰ってもらえてたら嬉しいなと思っています。
以下に、当日お話した内容を多少の調整をして公開します。